IT業界でも特にSESやSIer、フリーランスでよく聞く言葉が業務請負や業務委託というワードです。どちらも外部の人材に仕事を任せる場面で使う言葉ですが、これらには違いがあります。契約を結ぶ際には請負と委託の内容をよく理解したうえで契約する必要があるでしょう。そこでここでは、請負と委託の違いについて解説していきます。
業務請負は業務委託の一種
まず業務委託とは、自社の業務を外部に代行してもらうことです。現代の言葉ではアウトソーシングとも言います。そして業務委託には請負契約と委任契約の2種類があります。つまり業務委託と業務請負の違いに関しては、全く違うというわけではなく、業務委託の中に業務請負が含まれるものであるとわかります。
業務請負は依頼した成果物の完成を目的とした契約です。○月○日までに指定のシステムを納品するという契約になっており、指定の納期までに納品できなかった場合業務を請け負った側が違約金などを支払います。また、納品した商品がクライアントの意向に沿わないものだった場合、業務を請け負った側には修正に対応する義務があります。業務請負に関しては、一般的にクライアントから依頼を受けて自社で開発を行う受託開発を専門とするSIerがよく採用されています。
それに対して業務委任は成果物の完成ではなく依頼した業務の遂行を目的とした契約を言います。そのため、業務委任の場合は納品物が納期までに完成しなかったとしても契約違反にはなりません。ちなみに委任契約は通常の委任契約と準委任契約に分かれます。委任契約自体は基本的には公的な書類作成など法的業務が対象です。準委任契約は対象となる業務の範囲が広がります。IT業界においては自社に所属しているエンジニアを派遣するSIerでは準委任契約を採用しています。
業務委託契約を結ぶ際は、契約書に記載された契約内容をよく確認しなければいけません。契約内容に委任契約や準委任契約、業務請負契約と記載されている場合は業務を依頼する範囲がはっきり決まっているので比較的安心できるでしょう。ただし、契約書に業務委託と書かれている場合、準委任と業務請負の両方を兼ねている可能性があります。この場合はしっかり内容をクライアントに確認したうえで契約を結びましょう。
派遣と準委任契約の違いって？
IT業界において準委任契約と混同されやすいのが派遣です。どちらもクライアント先に出向して業務を行うこと、業務の遂行を目的としていることは共通しているでしょう。この2つに関しては、業務の範囲、指揮命令権が異なります。まず任される業務の範囲は準委任契約の場合、法律行為以外の業務が対象となります。それ故に準委任契約を結んだ場合は対応する業務も幅広くなりやすいです。それに対して派遣の場合は契約時に指定された業務のみを担当することになります。またクライアントの指揮命令権も、準委任契約にはありませんが、派遣はあります。そのため、派遣で働く場合は派遣先の指示に従って働かなければいけません。
業務委託を利用するメリット・デメリット
委任契約・請負契約を含む業務委託で業務を外注することにはどんなメリットがあるのでしょうか。また、業務委託を利用することでどんな弊害が想定されるのでしょうか。業務委託を利用するメリットはすぐに人材を調達できる点でしょう。また、雇用契約を結んでいる場合と違って契約期間にも限りがあります。そのため、常時人手が足りない職場はもちろん、繁忙期など一時的に人手不足が発生する場面で手軽に人手不足を解消できるでしょう。また、企業にノウハウが無い技術を持った人材を採用できるのも業務委託のメリットです。特に規模が小さい企業は技術力が低い故に業務に必要なスキルを持っている人材を採用できないケースも少なくありません。そこで業務委託ならスキル単位で人材に仕事を任せられるので、専門性の高い知識が必要な業務もスムーズに進められるようになるでしょう。
ただし業務を社外の人間に依頼する場合、社外秘が流出するリスクが高くなります。そのため業務委託で人に仕事を依頼する場合は、依頼する業務の範囲を明確にする、外部に持ち出しをしても問題ない業務を依頼するなど対策をしっかり行いましょう。
業務委託は違いをよく理解することが大切
外部に仕事を依頼する業務委託には委任契約と請負契約の2種類があります。同じ業務委託でも委任契約と請負契約で任される業務の内容や納品に伴う責任も大きく変わってきます。そのため、クライアントと委託契約を結ぶ場合は契約がこの2つのうちどちらなのか、それとも両方を採用しているのか、よく確認したうえで契約を結びましょう。
コメント